ワルン・トゥガス

Warung Makan Teges

閉店・移転、情報の修正などの報告

地元の人たちから絶大な支持を得るナシチャンプル専門のワルン。素材の味をいかして料理されたおかずはバリ料理のイメージをくつがえす上品な味わい!

こんにちは!バリ島ナビです。ウブドの隣りの村、プリアタン。旅行者向けのおしゃれなカフェやレストランはありませんが、日用品を売る店や市場、地元の人向けの食堂などが軒をつらねるこの村はバリ人の普段の生活が垣間見られるところ。このプリアタン村を南へ進むとタガスという村にでます。ここにはウブド近郊では知らないバリ人はいない、と言ってもいい、老舗のワルンがあるんです。
今日ご紹介する「ワルン・トゥガス」はタガス村からマス村に向かう街道沿いにあります。さまざまなおかずを盛ったたらいがガラスケースの中に並べられ、お客さんからの注文を受けて、お店のイブ(おかあさん)がてきぱきとおかずをご飯の上に並べて、ナシチャンプルを作ってくれます。朝の7時半に開店。8時にもなれば朝ごはんを食べにきたり、お弁当を買いにくる地元の人でにぎわい始めます。
「この店を始めたのは、僕のおばあちゃんなんだ。その頃、僕はまだ生まれていないからその頃のことはホントのところ知らないんだけどね。最初はコーヒーと、お菓子やスナックを売る、ほんとに小さな屋台だったんだ。で、だんだんと、ちょっとしたものを作って売るようになったらそれが人気で、いつのまにか今のような、ナシチャンプルの店になっていた、ってワケ。ちょっとしたもの、っていうのは、ウチではおじいちゃんが作るウルタン(豚肉のソーセージ)とかラワール(野菜と豚皮のあえもの)とかサテとか、ね。お祭りのときにウチで作る料理だよ。」
と話してくれたのは、「ワルン・トゥガス」の跡取り息子の、アグンプトラさん。
バリでは、お祭りや宗教儀式の際にご馳走を作ります。これは人間が食べるためのものでもあるのですが、それ以上に重要な目的は、お供え物として神様に捧げること。そしてバリならではの面白いことは、この「祭りの捧げもの、お供え物としての料理」をするのは男衆の役目。毎日の食事の用意というのはもちろん女性の仕事なのですが、祭りの時の特別な料理、つまり「ハレの日」の料理を作るのは男の役目なんです。この、祭りや儀式の料理というのは村の男衆が揃って行うことになっていて、村で評判の「料理上手なおじいちゃん」というのがどこの村にもいるのです。さしずめ、「ワルン・トゥガス」のおじいちゃんもそんなおじいちゃんのひとりだったのでしょう。

「台所を見る?」と言ってプトラさんに案内されたのは店の奥。ご家族の住む住居スペースの一角に、昔ながらのかまどを備えた台所がありました。台所の前にはハーブが植えられています。バリではお米やシロップの香り付けに使うパンダンという葉っぱ、ダウン・クチンとバリ人が呼ぶタイムのようなハーブ、そんなものが台所の近くに元気いっぱいに育っています。ワルンをはじめたプトラさんのおばあちゃんと料理自慢のおじいちゃんは、今でもまだまだお元気。でももう今はワルンのお仕事からは引退され、おじいちゃんの味を受け継いだ家族が、今ではたくさんのスタッフたちと一緒におじいちゃんの味を守り続けています。
店の奥、この台所のすぐ手前にも、お食事のできるようなこんなスペースもあります。
お客さんからの注文を受け、ガラスケースの前で料理を手際よく皿に盛り付けているのはプトラさんのお母さんとおばさん。「ウチは昔ながらの家族経営だし、特別なことは何もしてないし・・・」と今回の取材の最中もまるで困ったように言葉を飲み込むプトラさんでしたが、うーん、こういう「家族経営の暖かさ」が、「ワルン・トゥガス」のお料理にはちゃんと現れていると思います。
では、「ワルン・トゥガス」のナシチャンプルをいただいてみることにしましょう。
「ワルン・トゥガス」はナシチャンプル専門のワルン。メニューはありません。注文をとりにきてくれるスタッフのお姉さんに、「ナシチャンプル、サトゥ(ひとつ)」とか「ナシチャンプル ドゥア(ふたつ)」とか元気よく注文しましょう。そして一緒に飲み物を注文します。お店の中にある冷蔵庫の中から自分で冷たい飲み物を取ってきてもオーケー。これはあとで自己申告します。今回ナビは特別に3種類のナシチャンプルを作ってもらいました。「豚肉中心のナシチャンプル」「鶏肉主体のナシチャンプル」「お肉抜きのナシチャンプル」です。おかずの種類が多い「ワルンタガス」だからこそ、こんな注文の仕方もできるんです。特に指定をしなければ、豚肉、鶏肉、野菜を盛り合わせてお店の人がナシチャンプルを作ってくれますから、インドネシア語ができなくても心配することはありません。
こちらがナシチャンプル・バビ。バビ(豚肉)料理を主体にしたナシチャンプルです。バリ人のお祭り、儀式のご馳走といえば、まずは豚。豚肉料理主体で盛り合わせていただいたナシチャンプルは、そんなバリ人のお祭り料理、儀式料理のエッセンスをたっぷり味わえるナシチャンプルです。かりかりに揚げて、余分な油をすっかり抜いた内臓や皮や脂身、柔らかく煮込まれて肉が骨からほろりとはずれるバビケチャップ(豚肉の煮込み)、レバーや血を固めたソーセージなど、レストランではなかなかお目にかかれない、正真正銘のバリ料理のあれこれ。
ナシチャンプルアヤムは、アヤム(鶏)料理主体に盛り合わせたナシチャンプル。かりっと揚げた鶏肉、卵の煮込み、内臓とひき肉のすり身を固めて蒸し揚げたトゥム、皮や内臓のかりかりのからあげなどなど。クセのない鶏肉の淡白な味わいが、実に食べやすいナシチャンプルとなっています。
そして、お肉を使わないナシチャンプルがこちら。じゃがいも、豆腐、卵、野菜がたっぷりのナシチャンプルです。どのナシチャンプルにも付け合せでついてくる野菜料理は毎日日替わりで野菜の種類が変わりますが、どれもさっと茹でた数種類の野菜を、ココナッツフレークや香辛料であえたあっさり風味の和え物。毎日食べてもあきない、さっぱり味のお惣菜です。

「ワルンタガス」の味付けはどれも驚くほどあっさりしているんです。バリの、たいていのワルンでいただくナシチャンプルは香辛料と油を使ってエキゾチックでスパイシーな味付けになっていて、それはそれでおいしいのですが、毎日食べ続けるとなると日本人の胃にはちょっとヘビーと言わざるを得ません。ところがそんなワルンのイメージをくつがえすのがここ、「ワルン・トゥガス」のナシチャンプル。不思議なほどにあっさりしていて、素材の味がしっかり味わえる。そしてかみしめるほどに香辛料の味わいが複雑にたちあがってくるのです。素材の味がしっかり味わえるというのは、香辛料や油で味をカバーするのではなく、いい素材を使っていなければいけません。プトラさんは「うちは家族経営だし、家庭料理の味なんだよ。」と謙遜なさいますが、いやいやどうして。普通の家庭ではこの味はなかなか出せるものではありません。


「ワルン・トゥガス」のナシチャンプルを一度食べてみれば、バリの料理が「辛い」だけのものじゃあないってことが、よくわかっていただけると思います。「ナシチャンプル」のイメージが覆されること請け合いです。
今日も朝からたくさんのバリの人たちで大賑わいの「ワルン・トゥガス」から、バリ島ナビでした。

記事登録日:2010-06-29

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2010-06-29

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