スパイスとハーブたっぷり、辛くて甘くて刺激的な味との出会い。ホンモノのインドネシア料理が食べたければぜひここへ。
こんにちは、バリ島ナビです。ウブド王宮前からモンキーフォレスト通りに入り、しばらく行くと見えてくるサッカー場。ここを左折すると、デウィシタ通りに入ります。モンキーフォレスト通りとハヌマン通りをつなぐ短いこの通りの両側には、人気のカフェやショップが軒を連ね、ウブドで絶対「見逃せない」通りと言えます。
本日ご紹介する「カフェ・バタン・ワル」は、このデウィ・シタ通りのちょうど中ほどにあります。デウィシタ通りに面して、間口を広く取ったつくりは、ストリート・ウォッチングに最適。お買い物や散歩の途中の一休みに、気軽に立ち寄れるロケーションです。
「バタン・ワル」がウブドにオープンしたのは1997年。「No MSG」が当時はまだ珍しかった時代でした。「MSG」とはMonosodium Glutamate、グルタミン酸ソーダのことですが、一般的には「化学調味料」と解釈されています。つまり「No MSG」とは、化学調味料を使っていません、ということ。今でこそウブドにも「No MSG」をうたい文句としているカフェやレストランが増えましたが、「バタン・ワル」はそのハシリだったと言えます。
「バタン・ワル」のメニューには次のような文章が載っています。「私たちの料理には、いっさいの化学調味料、市販されているインスタントペーストを使用せず、アジアのフレッシュハーブを昔ながらの方法で調理して作った、ハンドメイドのペーストのみを使用しています。」
昔むかし、まだ「インスタント・ペースト」などというものがなかった時代ならいざ知らず、昨今はバリでも調理にインスタント・ペーストや化学調味料を使うのは、「当たり前」。「インドネシア料理レストラン」と言いながら実際には、市販されているインスタント・ペーストを使った「ソト・アヤム」や「カレー・アヤム」を出しているレストランやカフェが、最近はあちらこちらにあります。いやむしろ、そっちの方が主流かもしれません。なぜならば、市販されているインスタントペーストはなんといっても無難な、万人向けの味。千差万別な味覚を持つ世界各国からの旅行者すべてに提供する料理としては、これ以上最適なものはない、と言っていいかもしれないからです。
インドネシア料理の特徴は、なんといっても、南国特有の香辛料を使った刺激的な風味といえます。一概に「辛い」とだけ表現するのはまた違うような気もするのですが、しかしやはり「辛さ」というのはインドネシア料理の大きな特徴、そして魅力のひとつ。が、これも、千差万別な味覚を持つ世界中の旅行者からしたら、賛否両論なことは確か。「辛くしないでくれ」とおっしゃる旅行者も多いのです。というわけで、いきおい旅行者向けのレストランでは「辛さ」を感じる香辛料を控えめにした料理を出すことが多いのですが、そうやって作られた料理は、「ホンモノ」を知っている人間には、どうしても「ボケた」味に感じられてしまうのも確か。つまり、旅行者向けのレストランで正統インドネシア料理を提供するのは、市販のインスタント・ペーストを使わない限り、かなりハードルの高い技術を要求される、ということになるわけです。
そんな中、市販品や化学調味料を一切使わずに、レベルの高い料理を提供している「バタン・ワル」その秘密はどこに!?ナビは今回、この秘密にぐぐっと迫ってみました。お話を伺ったのは、「バタン・ワル・ウブド店」マネージャーのクトゥッ・アルタヤサさんです。
「バタン・ワルのメニューは、インドネシア料理と、ウエスタンの二本立てになってます。その中でも、バタン・ワルとしてのこだわりを感じていただけるものといえば、やはりインドネシア料理と言えますね。でもね・・・」とクトゥッさんは声をひそめます。「ここだけのハナシ。実はね、うちの料理はインドネシア料理じゃないんだよ。」ええっ!!!ナビびっくり!!
あっけにとられるナビに、クトゥッさんは笑いながら話を続けてくれました。「ねえ、だって考えてみて。正しいインドネシア料理っていうものがどこかにあるワケじゃないでしょ?たとえばサンバル(チリペースト)の作りかたひとつとったって、多分家庭ごとに入れるものとか、作る手順とか、微妙に違うと思うんだ。ましてインドネシアと一言で言っても、島が違えば味付けも素材も変わってくることがある。だからね、正しいインドネシア料理なんていうものは、どこにもないんです。」はあ、なるほど・・・
「でね、バタン・ワルの料理は、インドネシアの、いろんな料理の作り方をたくさんたくさん研究して、そしてそのいいところをつなぎ合わせて、さらにバタン・ワル独自の味付けを施した、言ってみれば、バタン・ワルのオリジナル、というわけ。たとえばバリの料理の基本と言われるペーストがある。ブンブ・バリ、もしくはバセ・グデと言われているものなんだけど、これはもし家庭で作るとしたら、多分多くても10種類くらいの香辛料を混ぜ合わせて作るものなんだ。でもバタン・ワルでは、これを作るのに25種類の香辛料を混ぜ合わせているんだよ。中にはバリではあまりなじみのない香辛料もある。そんな手のかかることは、家庭では普通やっていられないよね。でも、どこの家庭でも普通に作るバセ・グデの、辛味の部分だけのぞいたものを作ってしまったら、もちろん出来上がったものの味はどこかボケちゃうと思うよ。だからそのかわりに、何を加えればそこを補うことが出来るのか、我々はそこを研究したんだ。」はぁーナビ納得です!!
ということで、ナビ、無理を言って「バタン・ワル」のキッチンに入らせていただきました。棚狭し、と並べられた容器の中には、その、「バタン・ワル・オリジナル」のペーストがずらり。毎日フレッシュなこれらのペーストを作ることから、「バタン・ワル」のキッチンスタッフの一日が始まります。大ナベの中ではこれもベースとなるチリトマトソースがぐつぐつと煮込まれ途中。そして、もちろん当然のことながら、キッチンのどこを見回しても、インスタント・ペーストや化学調味料の類は見当たりません。
さあ!それでは「バタン・ワル・オリジナル」の、インドネシア料理、さっそくいただいてみましょう。いろいろなお料理のあれこれを味わいたければ、やはりコレです。
「ナシ・チャンプル」(5万8000ルピア+15%)
白いご飯といろいろおかずの盛り合わせ。長インゲンのココナッツ和え、鶏肉のココナッツ和えは、ココナッツフレークのほんのりした甘さのあとで、ぴりっとした刺激が全体の味を引き締めて、爽やか。鶏のサンバル和えは、赤い色をして見るからに辛そうですが、この「赤」は辛味のない大きな赤唐辛子を色付けに使っているだけということで、なるほど思ったよりも辛くない、マイルドな味つけに仕上がっています。サテ(串焼き)のお肉はバリでは珍しい牛肉を使っています。香ばしい焼き目もついて、タレは甘めのお醤油味。サテの横にある茶色い塊はデンデンといって、干した牛肉を甘醤油で味付け、いわば「牛肉の佃煮」とでもいうようなもの。さすが同じアジア。日本人にはひどくなじみのあるお味。カリカリのピーナッツとぱりぱりのおせんべいは味のアクセントに。おせんべいには、海老と、こぶみかんの葉っぱが混ぜ込んであります。そして中央にはジャックフルーツの煮込み。一緒に出てくるのは、三種のサンバルソース。辛いサンバルと、辛さ控えめのサンバル、そしてサンバルマタという、火を通さずに赤たまねぎやにんにくや唐辛子を刻んで油であえただけのバリのサンバル。どれも白いご飯に絶妙にマッチします。
「実はバタン・ワルの料理はインドネシア料理じゃないんです。」とおっしゃったクトゥッさんの言葉は、このお料理を注文すれば納得することと思います。
「カレー・アヤム」(チキンカレー4万8000ルピア+15%)
これこそ、バタン・ワル・オリジナル。多分インドネシアの、ほかのどこでも食べられないおいしさ。実はこれ、ナビの大大大好物でもあるんです。柔らかいチキンと、カリフラワー、いんげん、じゃがいも、トマト、にんじんなどの野菜もたっぷり入ったカレー。ココナッツミルクのマイルドな風味と、散らしたこぶみかんの葉っぱの爽やかさがアクセントになって、一瞬タイカレーを連想させるのですが、少しとろみがついたルーは、さらりとしたタイカレーとはまた違う印象です。辛さは控えめですので、辛いのが苦手という方も、スパイスの芳醇な味わいを充分堪能していただけるメニュー。ナビが、自信を持っておススメします。
このほかにも、「バタン・ワル」オリジナルメニューはいろいろありますが、お料理だけじゃなくてドリンクメニューにも、フレッシュなアジアのハーブやスパイスを使ったオリジナルメニューがあります。オススメは「ジンジャー・フィズ」(2万ルピア+15%)。生姜シロップのソーダ割り。「バタン・ワル・ブリーズ」(2万5000ルピア+15%)はミント、ライチー、生姜のライムジュース割り。どちらもカラダの中からヘルシーになれそうなメニューですね。
火曜日の夜は「チリクラブ・ナイト」と銘打って、シーフードバーベキューを、そして日曜日の夜は「サテ・フェスティバル」と銘打って、インドネシア各地のソースでいただくサテ(串焼き)を楽しめる、「スペシャル・メニュー」もご用意している「カフェ・バタンワル」。ヘルシーでおいしいインドネシア料理を食べたければ、迷わずウブド「バタン・ワル」へ。きっと納得のおいしさを体験できること保証します。以上バリ島ナビでした。