ウブドの真ん中でオープン以来、伝統的なバビグリンの作り方を忠実に守って毎日バビグリンを作り続けているお店!
こんにちは、バリ島ナビです。のっけから私事で恐縮ですが、ナビ、気がつけばウブド在住10年を越えていました。その間、日本から数え切れないくらい沢山の友人や親戚、知人がウブドを訪れ、色々なところへお供しましたが、ウブドに来たら、「ここだけははずせない!」という場所、ナビが自信を持ってオススメする場所がひとつあります。それが今日ご紹介するウブドの超有名店、バビグリンの「イブ・オカ」です。
バビグリンとはバリ料理の決定版、目にもインパクトあり、食べて驚きのおいしさを誇る「豚の丸焼き」。イスラム人口の多いインドネシアの中にあって、ヒンドゥー教徒が90%以上を占める、バリ島ならではの名物料理です。
「イブ・オカ」はウブドの真ん中、王宮と市場のある角から徒歩1分。まさに、ウブド中心に位置しています。王宮と集会所の間を北に伸びるスエタ通り。集会所から北へ2軒先が「イブ・オカ」。店が開店するのはだいたい午前11時頃ですが、10時半を過ぎれば気の早いお客さんはもうテーブルに座って、バビグリンの到着を待っています。
バビグリンの作り方はいたってシンプル。シンプルながら、それはとても手間と時間のかかる、まさに究極のスローフード。そして「イブ・オカ」はオープン以来、伝統的なこのバビグリンの作り方をいっさい近代的に変えることなく、忠実に守って毎日バビグリンを作り続けています。
バビグリンを作る作業は、毎朝4時頃から始まります。豚の喉にナイフを刺して、そこから血をすべて出します。息の根の止まった豚の表面の毛を焼いて、水洗い。きれいになった丸裸の豚のお腹を裂いて、内臓を全部取り出します。そしてそこに、「イブ・オカ」秘伝のスパイスと椰子の油をたっぷりと詰め込み、針と糸でお腹を閉じます。お腹にスパイスを詰め込まれたこの豚の両手両足を棒に縛って固定し、さらに椰子の油を塗りながら、遠火でぐるぐるとゆっくり回転させながら焼くこと4時間から5時間。こんがりと飴色にローストされた、バビグリンの出来上がり。
この作業、「イブ・オカ」では開店以来すべて手作業。毎日10数人のバビグリン職人さんたちが、手作業で豚を回し続け、おいしいバビグリンを作り続けているのです。
午前10時。朝の4時から作り始めていたバビグリンが、そろそろできあがる時間。以前は、焼きあがったバビグリンを、頭に載せて店まで運んできたものでしたが、今ではトラックに積み込んでやってきます。いよいよトラックが到着して、バビグリンがお店に運び込まれます。お店の開店準備も大詰めの中、開店の前にはお店のあちこちに、お供え物を置いて廻るのも、バリではけして忘れてはいけない大切な仕事。
とはいえ、これですぐに、開店、というわけにはいきません。60kgから70kgの豚1頭、これを解体するのもまた一仕事。ナタのような大きな包丁を振るって、解体作業がはじまります。
10時半を過ぎると、お店のあちこちのテーブルにはお客さんの姿が目立つようになりました。みんな黙って、解体作業が終わるのをおとなしく待っています。テーブルの上には、えびせんべいや果物などが積み上げられています。先に飲み物を注文し、テーブルの上のこんなものを食べながら、バビグリンが運ばれるのをゆっくりと待ちます。バビグリン、作るのもゆっくり、ならば、お客さんの方も、ありつけるまではじっくり待とう、の覚悟が必要。
そうしている間にも、肉はどんどんと解体作業が進んでいきます。こんがりと飴色に遠火で焙られた皮の中には、まさに「蒸し焼き状態」になった豚肉が、あくまでも柔らかく、そしてジューシーに、湯気をたてて隠れているのです。バビグリンはまさに、豚肉の、豚肉としてのおいしさを、まっすぐに味あわせてくれる究極の豚肉料理と言えます。
さあ!解体作業も済んで午前11時少し過ぎ。いよいよテーブルに座っていたお客さんに、バビグリンが配られ始めました。この時間になると各テーブルは、ほぼ90%の客の入り。さらにお客さんはどんどん増え続け、12時を過ぎる頃には店の入口には、入りきれないお客さんが列をなして待つ、というイブ オカ毎度おなじみの風景が。
それでは、バリ料理の真髄、究極のスローフード、「イブ・オカ」のバビグリンをご紹介しましょう。
こんなウブドの超人気店「イブ オカ」。お店が営業中はスタッフに話を聞くことなどとてもできる状態ではなく、お店の営業が終わったある日の夕方過ぎ、自宅を訪れることにしました。
ちょうど、親戚のおうちで儀式があったようで、持ち帰ったお供え物をテラスで仕分け作業中の「イブ・オカ」。「イブ」というのはインドネシア語で「お母さん」または目上の女性を尊敬して呼ぶ呼び方です。なのでお店の名前になっている「イブ・オカ」というのは「オカ母さん」「オカおばさん」といったような意味。この方がおいしいバビグリンの産みの親、オカおばさんです。
「今の場所にお店を始めたのは私の代からだけど、おばあちゃんの頃からバビグリンは作っていたわね。スパイスやサンバルの調合も、おばあちゃんから伝えられたウチの味よ。もちろんいっさい変えていないわ。最近は化学調味料を使うワルンも増えてきてるけど、ウチの料理はいっさい使っていないのよ。全部、自然のスパイスだけ。それから椰子の油。それをずっと続けているだけ。」とオカおばさん。
「朝は4時前には起きて毎日バビグリンを作る。マスの方にもう1軒お店を出したから、60kgから70kgくらいの豚を今は毎日8頭料理するわね。ウブドのお店は10時半頃から、バビグリンが売切れるまで。だいたい夕方くらいまでかしらね。ガルンガンとクニンガンとニュピの日以外は、毎日そうやってるわ。」
おばあちゃんから伝えられた味を変えることなく、便利だからといってインスタントな化学調味料の類を使うことはいっせいせず、機械を使うこともなく作業はすべて人間の手で行い、毎日作り続けるバリの伝統料理バビグリン。
皆様もウブドにいらした折には、ぜひ「イブ・オカ」のバビグリンを召し上がってみてください。豚肉のおいしさを改めて発見すること間違いなし。
ウブドに「イブ・オカ」あり。今日も「イブ・オカ」は、おいしいバビグリンを作り続けています。
以上バリ島ナビでした。