ムングウィ王朝の香りを残す、バリ島で最も優美な庭園寺院。荘厳なバリ・ヒンドゥー教の世界をのぞいてみたい。
アパ・カバール、バリ島ナビです!今回はクタからもウブドからも約1時間の中部バリ、ムングウィにある観光スポット、「タマン・アユン寺院」を訪れてみました。
クタからクロボカンを北上し、外国人観光客向けの町並みとは全く違う、バリのローカル都市の風景をながめながら、1時間ほどで到着したのが、ムングウィ村。その中心地から2kmほど東、ひときわ賑わう一角が、今回の目的地「タマン・アユン寺院」です。到着したのはお昼少し前。でもすでに寺院入り口の駐車スペースは満車状態。それを囲むように道ぞいに並ぶテント張りの屋台も大変なにぎわいです。門前の露天などものぞいてみたくてワクワクしますが、まずは、寺院に入場してみることにしますね。
寺院は、ほぼ正方形の敷地のまわりをぐるりと掘割りに囲われていて、釣り糸をたれているバリのお父さんたちが何人もいます。
入り口はもちろん、石の割れ門です。向かって左側に屋根のついた「タマン・アユン寺院」という看板が立っています。ここにも何人かの子供達が座ってくつろいでいます。海外からの観光客、休日を過ごしに来た様子のバリのローカル家族、バリ以外のムスリムの島からやってきたドメスティックのお客、そしてもちろん、バリ・ヒンドゥーの正装に身を包み、様々なお供えを抱えたバリの人たち…と本当に色々な参詣の人たちが次々と石畳の参道に沿って、割れ門をくぐり寺院に入って行きます。
ちょっと歴史の説明♪
ここで少し「タマン・アユン寺院」についてご説明しましょう。17世紀、バリ島にはいくつもの王国があって、このあたりはムングウィ王国という広い国が栄えていました。その国を守る鎮護寺として1637年に建立されたのがこちらの「タマン・アユン寺院」です。「アユン」というのは歴代のムングウィ王が名乗った名前です。残念ながら19世紀にメングウィ王国は西隣のタバナン、南隣のバドゥン、両王国の連合軍との戦いに敗れ、国土は2つに分断され、ムングウィ王国の名前は消滅しました。勝利したタバナン王国とバドゥン王国は今もバリの県名としてその名がありますが、ムングウィは県名にになることもありませんでした。でも、このムングウィ村の人たちは変わらず栄えた王国を誇りにし敗戦で荒廃したこの寺院も1937に改修されて今も大切な、憩いの場、祈りの場となっています。バリ島にある数多くの寺院の中で、バリ・ヒンドゥー教の総本山、ブサキ寺院についで2番目に大きな寺院でもあります。
割れ門を進むと~
割れ門を入ってすぐ右に「チケット」と書かれた札のあるかやぶきの東屋があります。まずはここでチケットを購入してから先へと進みます。
門の中、つまり掘割の内側には、広大な芝生の庭園が広がり、噴水のある池や、休憩小屋が見えます。
闘鶏“タジェン”の闘技場
さっきの「お布施」小屋を過ぎてすぐ、参道の右手に、お手洗いの看板がある入り口と、その中に大きなかやぶき屋根の建物。聞くと、祭礼の時の生贄として、闘鶏(タジェン)が行われる闘技場でした。今日は何も行われてはいませんが、場内に入ってみるとものすごく広い空間がひろがっています。
国技館…とまでは言えませんが、ちょうどお相撲をする会場のような雰囲気です。真ん中の闘鶏が行われる場所をぐるりと観衆が見下ろすように、四角いすり鉢状のつくりになっています。この場内いっぱいに正装で決めたバリの男たちが集まって、闘鶏に熱狂している姿や歓声を思わず想像してしまいます。機会があったら実際、闘鶏の行われる日に来てみたくなりました。
ちなみにお手洗いはこの闘技場をつっきって入った一番奥にあります。1人1000ルピアの有料トイレですが、とてもきれいに管理されていました。
闘鶏場を出てすぐの右側には「寺院参詣にふさわしい服装をお願いします。あなたの来訪を心より歓迎させていただきます。」という看板が立っていました。そう言われてみれば、海外からのお客さんたちも腕や足をあまりあらわにしない服装で訪れている様子です。もしかすると出発前にガイドさんから「お寺詣でにふさわしい服装をお願いします。」という説明があるのかもしれませんね。ナビの服装はTシャツ、Gパンに日よけ用の薄手のカーディガンです。カジュアルなスタイルであっても、バリのお寺見学には肌をあまり露出していない格好がマナーです。
寺院の境内に入ります。
ここからが寺院の境内
さあ、緑の庭園を眺めながら参道を進みましょう。まずは、先ほどくぐった割れ門よりも少し小さな、でも、より重厚な雰囲気の石の割れ門が見えて来ます。ここからがこの寺院の境内です。
門の脇に「生理中の女性はココから先への入場はできません。」の看板。ここからは聖域という訳です。割れ門をくぐると、黄色と白の傘が飾られた、精霊が降臨する祭壇が向かえてくれます。この祭壇の向こう正面に、今度は、石積みの屋根、木の扉に守られた門が見えてきます。
「タマン・アユン寺院」の本殿を見ながら遊歩道を散策
この門の扉の中が「タマン・アユン寺院」の本殿です。残念ながら、ここから先、中に入れるのは、正装をしたバリ・ヒンドゥー教徒だけです。例えバリ人であっても「今日は休日なので、のんびりしに」やって来た、カジュアル・ウェアの人たちは入ることが許されない「聖域」です。門の右脇に「観光の方はこちらの遊歩道をお回りください。」という看板も立てられています。でも、本殿をぐるりと囲んでいる塀は、高さ1mくらいですし、遊歩道もこの塀に沿って続いているので、中の様子を外から眺める事ができます。「信者以外にはご開帳しません。」とは言わず、やって来た誰もがこの美しい伽藍をどこからでも眺められるという開放的な造りなのも、これだけの賑わいが続いている要因だとも思えて、うれしくなります。
さっそく、遊歩道を塀に沿って歩き出しましょう。すると、見上げるような高さの鐘楼が目に入ります。近づいて、目算で1m、2m…と数えてみるとだいたい17~18mはあるでしょうか、重厚な石造りの建物です。日本のお寺の鐘とは少し違っていて、バリでは太い丸太の中をくりぬいたクルクルと呼ばれる木製の鐘がかかっていて、儀式の始まりや、村の人たちを集合させる時にコーンコーンと打ち鳴らされます。
鐘楼から遊歩道に戻ると、今度はたくさんの絵がかけられた、「画家のアトリエ」風の建物があります。「お土産屋かな?」と覗くと、ここを守るおじさんが「村の画家が絵を持ち寄って、売れたお金はお寺に納めるんだ。」と説明してくれました。絵画はバリのお土産屋で見るようなモチーフでしたが、その横に置かれたバロン像がユニークです。遠目には「バロン・ダンス(バリの獅子舞)用かな?」と思いましたが、近づいてよくよく見ると、このバロン、全身を農作物で飾り付けてあるんです。タテガミは稲穂、顔や背中などは色とりどりのスパイスや種を細かなモザイク状に貼り付けて作ってあります。大きな祭礼の時に大地の恵みに感謝するお供えとして奉納する物だそうです。観光客がうれしそうにお供えバロンと並んで写真を撮っています。
さあ、また、遊歩道に戻りますね。今度は、左手に降りられる階段があって、その先には、バリの正装をしたお母さんやおばあちゃんたちが忙しそうに働いています。眺めていたら、何人かのお母さんたちが手招きして、「どうぞ、見ていって」と呼んでくれました。さっそく階段を下りて、近くまで行って見ましょう。ここは女性達が、寺院に供える、お供物を作る場所でした。敷地の半分がお供物作りの小屋で、もう半分はかまどと台所になっています。働いているお母さんたちは40人くらいでしょうか。本当に忙しそうです。
高床になったお供物作り小屋から見せていただきます。皆さんおしゃべりをしながらも手は全く休めることなく作業中です。小麦粉を練って、色々な色に染められた、粘土状のたねを手でこねて形作りながら、かわいらしいお供えがどんどんできていきます。
「神様が喜んでくれるし、お寺も華やかになるでしょう。」と皆さん本当に楽しそうです。
お隣の台所では、この「粘土」を準備したり、できあがったお供物が長くもつように油で揚げたり、道具を洗う作業をしていました。
油を熱するのは、昔ながらの薪をくべるかまどです。どの作業もずっと眺めていたくなります。お供物作りをしている日にここを訪れたら、ぜひ、近くに下りて見せてもらってくださいね。
低い塀越しに本殿が見えます
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本殿の塀に沿って続く遊歩道
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お母さんたちにお礼を言って、再び遊歩道に戻りました。遊歩道の右側に続く、本道の塀の中にはまっすぐな参道が走り、その両脇には黄色い布がかけられた、お供物を並べる小屋がいくつも並んでいます。遊歩道の左手には寺院を囲む掘割が見え、深い緑の水とそれを覆う木々のこずえが涼しそうに続いています。観光のお客さんものんびりと散策しながら進んで行きます。
本殿の一番奥が見える所で、ひときわ賑やかに写真が撮られています。ここから、本殿の門まではメルと呼ばれるシュロぶきの「宝塔」が10基、整然と並んでいます。メルと呼ばれるこの宝塔が並ぶ風景がこの寺院見学のハイライトです。なので、皆さん、より「タマン・アユン寺院」らしい荘厳な景色をバックに記念撮影というわけです。
めずらしい2重のメル
バリ・ヒンドゥー教では奇数が神聖な数とされていて、寺院に建立されるメルも5重、7重、11重の塔と奇数階に統一されるのが普通ですが、この寺院の10基のメルの中にはめずらしい2重の塔がある事も有名です。
また、本殿の参道脇にメルと同じくらいの高さでそびえるヤシの木がありますが、これは「ロンタル・ヤシ」。まだ紙がなかった王朝時代、このヤシの葉を乾かした物に重要な文書やお経を書いて、本のように綴じて使われました。バリの歴史博物館やアンティーク・ショップでは、この「ロンタル文書」を目にすることができます。
10基のメルに沿って遊歩道を出口の方向に進む事もできますが、途中いくつかの分かれ道があって、そちらに行くと、深い緑にかこまれた緑道になっていて、休憩小屋もあり、お弁当を広げたり、恋人同士で語り合ったり、ボール遊びをする子供達も見えました。まさに市民の憩いの場という雰囲気です。
ナビは遊歩道から寺院の出口に向かいますね。なぜなら、到着したときから、門前の屋台が気になって仕方がなかったからです(笑)寺院を出る時、お布施を払った小屋のおじさんが「いい写真撮れたかい?」と笑顔で声をかけてくれたのも印象的でした。
最後は出店でお買い物
さあ、お寺詣での仕上げに門前市をひやかしましょう。ちょうどお昼をすこし回った時刻。色んな食べ物屋さんが出ています。
バリの観光名所にしてはめずらしく、いわゆる「物売り」と呼ばれる、チョット強引なお土産売りは見当たりません。ちょうど日本の縁日のように子供のおもちゃや、ローカル・スナックを売るお店がずらりと並んでいます。ローカルの人たちが食べていておいしそうに見える物を買って食べてみるのにも、なんだかいい雰囲気です。
欲しくなる子供たちの気持ち、わかりますよね!
帰りの車に乗ってから、最後にどうしても気になって写真にとったのが、「カラーひよこ」!とっても、あざやかな色でしょう!(笑)子供でなくても、思わず走りよって眺めてしまいますよね。
皆さんもぜひ「タマン・アユン寺院」を訪れて、市民の憩いに参加してみてくださいね。以上、バリ島ナビでした。サンパイ・ジュンパ~!