注目の若手グループによるクールな公演!古典舞踊から現代作まで幅広いジャンルをこなせる唯一の実力派。
こんにちは!バリ島ナビです。バリ芸能の中心と言えばウブドが有名ですが、その中でもプリアタンは古くからの芸能の村として、地元では一目置かれた存在です。日本でも人気の「ティルタ・サリ」、初めて海外にバリ舞踊を紹介した「グヌン・サリ」、どちらも、この村の楽団。そして、これからのプリアタン芸能を担う若手グループとして現在大きく期待されているのが、今回ご紹介する「グンタ・ブアナ・サリ」です。滞在中に何を観るか迷ったら、もう、ココしかないでしょう!
バリ舞踊を観に行こう!と誘われて、真っ先に思い浮かんだのが、この「グンタ・ブアナ・サリ」。というのも、ここをオススメする知人が周囲に多く、その前評判も、やたらと褒めちぎるものばかりであったため「そんな大げさな~」と、少々疑いつつも、どこか気になっており、実際に自分の目で観て確かめなくては。と思っておりました。観光用の公演も行っているで、ぜひこの機会に!と、火曜日を待って、さっそく足を運んでみました。
結論から先に述べると、「バグース・スカリ!(=もう最高!)」です。なぜか、「グンタ・ブアナ・サリ」は子供楽団というイメージがあったのですが、会場で渡されたプログラムには、結成して15年以上経つと書かれていました。もちろん、現れた演奏者は立派な青年達。
実際に聴いて驚きましたが、最初のフレーズが叩かれただけで「あうんの呼吸」という言葉がパッと頭に思い浮かぶくらいに見事に揃った演奏で、久しぶりに感動しました。幼い頃から一緒に演奏し、共に大人に成長してきたメンバー同士だからこそ、ここまで深いハーモニーが生まれるのでしょう。その息のあった演奏は、大人の楽団が同じ年数を経過しても、真似することができないはずです。きっと、それがバリ人には感じ取れているのでしょうね。普段は御祈りだけに寺院に行く人が、「グンタ・ブアナ・サリ」が来ると知ると、帰宅せずに夜中まででも寺院で待って、奉納舞踊を観ていくそうです。さすがカリスマ楽団。
さらに踊り子のレベルが高いのが嬉しい!舞踊の技術が高いのは当然ながら、その容姿に大満足。プリアタンの踊り子は美人が多いという巷の評判ですが、バリ風に言う「美人=色が白い」の条件をクリアしているのはもちろん、若手だけを採用しているので、スリムで手足が長い踊り子体型の美少女が勢揃い。
本当にこんな場所に会場が?という細い路地を入っていくと、周囲の民家とは少し違う作りの門が・・・入口が非常にわかりにくく、思わず通り過ぎそうに。中に入ると受付があり、ここでチケットが買えます。チケットは街頭の売り子やインフォメーションなどで事前に購入することも可能。「ウブド・インフォメーションから18時45分頃に無料送迎車(ベモ)が出ているので、どなたでもご利用いただけます」との話。次回は利用してみようと思います。
雨を気にしなくて良い全天候型の半屋外ステージは、マーブル床の豪華な建物(舞台は踊り子が滑らないように石タイル)。花で彩られた素敵なデコレーションは、当日の昼から準備をするそう。また、壁面には古いバリ舞踊の貴重な写真がギッシリと飾られています。バリ島では音楽も舞踊も神様に捧げるためのもの。お客様が到着する前の、まだ静かなステージでは、祈りを捧げて楽器にお供え物を供えます。
舞台裏の様子
会場に早く到着しすぎたのでウロウロしていたら、偶然、知人がいて呼ばれ、入ってみたら控室。狭い場所に本番前の踊り子がひしめいて衣裳を着ており、出番が遅い踊り子は外で待機中の状態。かなり混んでいたので、迷惑にならない程度に、ちょっとだけお邪魔して、すぐに退散・・・
このグループには専属の着付け係がいます。ヒゲが似合う渋いおやじ!写真のように数メートルある細長い帯を、踊り子の体にギューギュー締めつけながら巻いていきます。もちろん踊り子同士でも、お互いの衣装チェック。間に合わない友達がいれば、駆け寄って手伝ってあげます。
準備が整ったら、いよいよ本番。緊張がこちらにも伝わります。音楽に合わせて、いざ舞台へと飛び出す瞬間!
バリ舞踊の公演内容について
ウブドで行われているバリ舞踊公演は、どこもほぼ似たような内容で構成されています。あまりマニアックな物や、バリ語の劇で意味が分からない様な作品は観光客に受け入れられないという実情もあり、誰が観ても楽しめるオーソドックスな舞踊をプログラムに持ってくるようです。
各楽団、他の公演とは差をつけようと、演目の選択には趣向を凝らしているようで、舞踊の公演では「楽曲、歓迎の踊り、男性舞踊、女性舞踊、カップルの踊り、仮面舞踊(バロンなど)」という演目の流れが一般的なようです。これ以外にはケチャや影絵などの公演があり、毎晩ウブド内の数ヵ所で行われています。
「グンタ・ブアナ・サリ」では、プリアタン村に伝わる古典レゴン舞踊をメインに、現代バリ舞踊と仮面舞踊を公演のプログラムとして上演しています。それらの演目について簡単にご紹介しましょう。
楽曲 ウジャン・マス(インストゥルメンタル)
オープニングの器楽曲は「金の雨」という古い曲でした。グンタ・ブアナ・サリ楽団が使用する楽器はゴン・クビャールという編成のもので、「稲妻」や「閃光」という意味を持ち、エネルギッシュな音を出すのを得意とします。若々しいパワーを持つこの楽団にはピッタリの楽器です。
一番はじめに登場するのは、お客様の来場を歓迎するウェルカム・ダンスの踊り子たち。可憐な少女達が、にこやかに踊ってステージに華を添えます。
みんな可愛いらしい!観ているこちら側まで、一緒につられて微笑んでしまいます。
うって変わって、激しい男性舞踊。足腰の強さが際立った動きをします。この舞踊は戦場へ向かう戦士を踊りで表現します。バリ舞踊では、踊りの技術と同程度に「エクスプレシ(=表情)」が重視されますが、この踊り手さんのエクスプレシは激しく、眼光の鋭さも本物でした。将来大物になる可能性大。
プリアタン王宮に古くから伝わる古典レゴン舞踊が披露されます。踊られるのは悲恋の物語「レゴン・ラッサム」で、最初にチョンドンという王宮の女官がソロ舞踊を踊ります。
続いてレゴンの登場、二人が全く同じ動きで踊ります。ここまでは抽象的な舞踊で、ストーリーはありません。チョンドンが舞台裏に引っ込むと、レゴンが、ラッサム王とランケサリ姫の役に別れて、物語が始まります。
ラッサム王はダハ王国から誘拐してきたランケサリ姫に結婚を迫りますが、婚約者のいる姫は拒否し続けます。実らない恋に怒りと悲しみを抱いた王は、ダハ王国へ宣戦を布告します。先程のチョンドン役が、羽をつけて凶兆の鳥「ガルーダ」として再入場。ラッサム王が戦場へ行かないよう邪魔をしますが、王は死を覚悟で戦場へと向かって行きます。
長い爪が特徴的な仮面舞踊。踊り手が演奏者に合図を出して進められる形式なので、演奏者は、踊り手をにらむように注視して、その動きに合わせた音楽を奏でます。パッと見では、指を震わせて簡単に踊っている感じですが、音楽を知らないと踊れないうえ、仮面で視界が遮られてバランスを取るのが困難な、高度な技術が必要な踊りなのです。仮面舞踊は欧米人に人気があるのか、金髪のお客さんが、急にバシバシとフラッシュを焚いて撮影をはじめました。
スリン(笛)の音色が際立った曲です。激しい演奏と、笛の音だけの静寂を思わせる演奏との強弱の波が交互に混じった曲で、その微妙な変化をキチンと表現できる楽団は、そう多くはありません。難しい奏法のはずなのに、ピッタリと呼吸の合った演奏は、さすがとしか言いようがない。
踊り子にばかり気を取られていましたが、ミュージシャンもイケメン揃い。
極楽鳥の雄が踊っている途中、メスの極楽鳥が現れて2羽で華麗に舞います。羽根を広げて大きく回転するのを見ていると、「舞う」という表現が似合います。優雅に舞っている踊り子ですが、背中には玉のような汗が流れていて、その感情移入は真剣そのもの。鳥になりきっています。それにしても、美しい人ばかりだ・・・
日航ホテルのオープン時、「グンタ・ブアナ・サリ」が呼ばれました。そのイベント用に新しく創作した舞踊であるため、ニッコーの名前が付いています。複数で踊るそうですが、この日はなんと4人。仮面舞踊を踊りこなせる男性の舞踊家が、この人数揃うというのは珍しいです。面白い顔の仮面が子供に受けるのか、後方に座って公演を見ていた近所のバリ人の子供集団が、大喜びしていました。
終演の曲
舞台の終了時には、短い簡単な曲を演奏するのがバリ芸能ではポピュラー。巨大な銅鑼「ゴン」の音で、演奏者が挨拶して公演の終了となります。
今回3人連れで出かけましたが、メンバーの中に、別の公演で初バリ舞踊体験をした人が居て「どの踊りも同じに見えて退屈するから行きたくない」と出発5分前までごねられました。しかし、強引に連れ出して良かった。ただ、うっとり観せるだけでなく、激しいものや、笑いを誘うものが取り入れられ、メリハリのあるパフォーマンスに仕上がっており、全員が時間を忘れて見入っていました。前述の、ごねた方もかなり楽しめたようで「ガムラン音楽とバリ舞踊のイメージ」の名誉挽回ができたことに、ほっとひと安心。
難を言えば、公演前の待ち時間に御近所から漂ってきた調理の匂い。空腹の身にはつらかったので、事前に食事を済ませてから行かれることをオススメします。
踊り子さんと一緒に、さっきまで舞台だったステージ上で思い出の1枚が撮れます。さらに希望者がある場合、公演の終了後に、簡単なレクチャーつきで楽器を実際に触らせてくれます。
そういえば、公演開始前に英語での簡単な挨拶があり、その中で「まず、バリ芸能に興味を持っていただいたことに、非常に感謝します。そして、数ある公演の中から、この楽団を選んで足を運んで下さったことにも。」という内容がありました。この謙虚さも、他とは異なった、グンタ・ブアナ・サリ特有の芸能に対する姿勢を物語っているようでした。
ということで、オススメ度ナンバー1の「グンタ・ブアナ・サリ」。写真と文章だけではお伝えできない生のガムラン音楽の迫力と、絢爛豪華な踊りの美しさは、火曜日のグンタ・ブアナ・サリ公演で、ぜひ実際にご体験ください!
以上、バリ島ナビでした。