ウブドで長く芸術活動を支援してきた交流センター「ポンドック・ライブラリー」がお送りするガムラン公演。
こんにちは!バリ島ナビです。まだインターネットが普及していなかった十年も前から、海外へ向けてバリの情報を発信し続けてきた「ポンドック・ライブラリー」をご存じでしょうか?ウブド中心部のサッカー・グラウンド脇に各国語の本を集めたミニ図書館を運営して旅行者の交流を図り、ボランティア活動などにも力を注いできました。現在、定期公演を開催する2つのグループと、外国人演奏家も多数所属する女性ガムラン楽団を抱え、芸術普及にも貢献しています。
モンキー・フォレスト通りにあるサッカー・グラウンドの、ちょうど南側に大きな建物があります。ここが、ウブド南地区の集会場であるバレ・バンジャール・ウブド・クロッド。夕方になるとリンディック(竹のガムラン楽器)を客寄せで叩いているので、すぐに見つけられます。階段を上がって狭い通路を抜けると、中はとても広々としています。お客さま用に置かれた椅子の数からすると、少し広すぎるくらいですが、普段は村の集会場として利用されているため、数百人が収容できる大きさになっているそうです。ステージの石造りの壁には、バリ島の神々の彫刻がビッシリと彫ってあり、壮観です。
開始時刻になると、舞台の正面から演奏者が次々に入場してきます。この楽団の演奏者の衣装は、上着を着ずにサロンを巻いただけの、肩を出したクラッシックな形になっています。
お客さまの来場を歓迎するウェルカム・ダンスです。このスカール・ジャガットは、わりと新しく創作された踊りで、衣裳も古典舞踊とは異なり、腰巻のサロンがスカートの様に裾広がりの形となっています。
客席に向かって花を撒くタイプのものではありませんが、他のウェルカム・ダンス同様、手にはお花を持ってお客さまへの歓迎の意をあらわします。足のついた器に丁寧に花を飾ったお供え物型の花器は、見た目と違って重たく、踊り子泣かせだそうです。
ウェルカム・ダンスが終わったとき、演奏者がお互いの顔を見て、キョロキョロしはじめました。クンダン楽器(太鼓)は、演奏する曲によって使い分けることがあるのですが、そのクンダンの大きい方を膝に乗せたと思ったら、小さいクンダンに持ちかえ、また再度大きい方を持ったりして・・・
そして急遽、プログラムに載っていない「シノム」と呼ばれる種類の器楽曲が演奏されました。こういう場合、たいていは次の舞踊の踊り手が、着替えが間に合っていない、という状況です。ですが、我々観客にとっては、一曲おまけで得をしたような、嬉しいハプニングですね。
男性舞踊のバリスは、戦士が戦場へ向かう様子を踊りで表現します。激しいクンダン楽器(太鼓)のリズムに合わせて舞台に飛び出してきたのは、女の子かと思うくらいパッチリとした目をした、小さな男の子でした。しかし、その踊りは非常にキレがあって力強く、可愛らしい見た目とのギャップに驚きました。
レゴン・クラトンは宮廷のレゴンという意味で、有名な「レゴン・ラッサム」と同じものです。ラッサム王の悲恋の物語が踊られます。最初にチョンドンという王宮の女官がソロ舞踊を踊ります。続いてレゴンと呼ばれる二人の踊り手が登場。
チョンドンが退場した後、今まで同じ動きで踊っていたレゴンが、ラッサム王とランケサリ姫の役に別れて、物語が始まります。
ラッサム王はダハ王国から誘拐してきたランケサリ姫に結婚を迫りますが、婚約者のいる姫は拒否し続けます。実らない恋に怒りと悲しみを抱いた王は、ダハ王国へ宣戦を布告します。
ランケサリが退場すると、チョンドン役だった踊り子が、凶事を知らせる鳥ガルーダとして再入場してきます。ラッサム王が戦場へ行かないよう、激しく攻撃して邪魔をしますが、王はガルーダを無視して、戦場へと向かって行きます。
男性戦士を表現した舞踊ですが、踊り手は女性です。このように本来の性とは異なったキャラクターを踊る舞踊をブバンチアンといいます。戦いに勝った戦士の、勇者としての誇らしげな表情を踊りの動きであらわします。ガムラン音楽も一段とパワーが激しく、スピード感あふれる曲です。
この女性の踊りはしっかりとしており、男らしい!と言いたい程に力強いものでした。また、ガムラン音楽とのタイミングも気持ち良いくらいにピッタリと合っていて、鑑賞後に、なんだかスカッーとした気分になれました。
1950年代に天才舞踊家のマリオによって作られた男女デュエットの踊りで、蜂の求愛の踊りとして知られています。最初にメス蜂があらわれて、花いっぱいの庭園の中をヒラヒラと楽しそうに舞っています。そこへオス蜂が登場、メス蜂の踊る様子を遠くから眺めます。
オス蜂に見られていることに気が付くメス蜂。距離を置いてお互いを見つめている2匹ですが、少しずつ近づいては相手の反応を確かめながら踊りが進み、最後は仲良くカップルになります。
仮面舞踊のジャウックは、白い仮面のジャウック・マニスと、赤い仮面のジャウック・クラスがあります。どちらも悪魔の化身だと言われていますが、このジャウック・マニスの方は、踊りの仕草や仮面の表情からすると、ユニークなキャラクターであるイメージを受けます。
長い爪が特徴的な仮面舞踊ですが、ここのジャウックは特に爪が長い!衣装に引っ掛かったりしないのかしら、と余計な心配・・・
最後の曲が終わると、踊り子が舞台へ戻って来ます。
先ほどのジャウックの踊り手さんは、仮面を取ると、こんな顔の方でした。
先程タルナ・ジャヤを踊った女性の流暢な英語の挨拶で公演は締めくくられます。
上記に書いたように、この楽団の衣装はクラッシックで素敵です。もともとバリ島は男性も女性も上半身には何も身に着けていませんでしたが、オランダの統治時代に風紀が乱れるとの理由で衣服の着用が義務付けられたそうです。それでオランダの服装を見本としたことから、アジア地域の民族衣装なのに西洋の背広やブラウスの形をしているとか・・・
舞台が終わって、帰り支度をしていた演奏者に、この衣装のことを褒めたら「自分は痩せているから、こんなに肌を出した服装は、本当は苦手なのだけど・・・」とポツリと発言。何故???スリムな方が格好イイでしょうに!・・・太っている方が、恰幅が良い。と褒められるバリ島ならではの発言でした。
現在、ポンドック・ライブラリーに所属の楽団は「ポンドック・ペカック」という名前を使っており、毎週日曜日にゴン・クビャール楽団が「レゴン舞踊公演」(今回紹介した公演です)。そして、毎週土曜日にゲンゴンというバリ独特の口琴を使った楽器編成の楽団が「フロッグ・ダンス公演」を行っています。もうひとつのインターナショナル・レディース・ガムラン・グループの方は、定期公演は行っていないものの、お寺などでその腕前を披露しているそうです。外国人に向けて開かれたバリ芸能の学習環境を作りたい、ということで、ガムランや舞踊のワークショップもセンター内で行っているそうです。以上、バリ島ナビでした。