バリ芸術大学を卒業したメンバーが中心になって結成した楽団による定期パフォーマンス
こんにちは!バリ島ナビです。
いまから20年ほど前(1988年)のウブドで、それまで村を単位にメンバー編成していたガムラン楽団を「芸術大学出身者」を集めた楽団という形で結成して、当時、新しい風を起こしたグループ。火曜日と土曜日にそれぞれ場所とプログラムを変えて公演が行われています。この楽団の中心となっているのはアナック・アグン・グデ・アノム・プトラ=通称アノム氏。妻、娘、息子ともにスマラ・ラティに参加し、芸能一家としても頑張っています。
週に2回行われているスマラ・ラティ楽団の公演ですが、今回ナビは「レゴン舞踊とケチャッ・ダンスが一緒の公演で観られるんだって!」という情報を得て、土曜日の公演の方を取材してきました。火曜日の公演「スピリット・オブ・バリ」に対し、土曜日の公演には「ザ・ビューティー・オブ・レゴン」のタイトルがつけられています。演奏をジックリと聴いてスピリットに触れたい派なら火曜日、ビューティーな踊り子を見る&ケチャッも見ておきたい派なら、こちら土曜日の公演へ向かいましょう。
この日は、雨が降りそうな天候であったため、会場は寺院の前庭でなく、脇に建っているワンティラン(集会場)にセッティングされていました。ステージは扉の彫刻や、ケチャッの為に灯される明かりがバリ風の素敵な雰囲気を出しています。
公演プログラム
楽曲 ゴラ・ムルダワ(インストゥルメンタル)
プログラムには、楽団の太鼓奏者のチャタル氏と、音楽リーダーのタモ氏による合作曲の「ブラマラ・アングラヤン」と書かれており、この曲を知らないナビはワクワクして座っていたのですが、曲が始まった途端「あれ?これはどこかで聴いたことがあるメロディー・・・あれれ??」この日のオープニングを飾って演奏されたのは、有名な作曲家ニョマン・ウィンダ氏の作品で「ゴラ・ムルダワ」でした。スマラ・ラティ楽団では定番の曲として頻繁に演奏されている、ダイナミックな現代器楽曲です。演奏しなれた曲であるためか、奏者のみなさん「勝手に手が動いてる」という感じで悠々と演奏されていました。
歓迎の舞踊 ガドゥン・ムラティ
ルジャンの要素とレゴン舞踊の要素を取り入れてアレンジされた近年の舞踊で、バリのイカット絣を用いた衣装が印象的です。薄緑色のガドゥンという花と、ジャスミンの花のムラティでお客様を歓迎するウェルカム・ダンスです。
仮面舞踊 ジャウック・マニス
楽団の看板である、アノム氏の登場です。スマラ・ラティ楽団のアノム氏といえばバリス舞踊の踊り子として有名ですが、ナビは、彼の、このジャウック舞踊も好きでした。ジャウックは、長い爪をブルブル震わせて踊る仮面舞踊で、ハンサムなアノム氏の表情は仮面に隠れていますが、アノム氏の「気」が、伝わってきます。下手をすると誰が踊っても同じに見えてしまう仮面舞踊。仮面で顔が隠れ、体型も隠してしまう衣装を着用して踊りますが、それでも、中に誰が入って踊っているか判る、というのは、自分の踊りのスタイルが定着しているということ。踊り子として素晴らしいということなのです。
レゴン舞踊 レゴン・ジョボグ
レゴン・オブ・ビューティーのメインであるレゴン舞踊です。インドの古代叙事詩ラーマヤナ物語から、猿の王の兄弟の争いを描いた作品レゴン・ジョボグが踊られます。今回はシンガパドゥ村の踊り子が踊っていました。レゴンは優雅な舞踊という印象があるのですが、シンガパドゥ村に独特の、元気のあるレゴン舞踊でした。通常は戦いのシーンで葉っぱを握って殴り合ったり、相手を倒して上から乗りかかって叩いたりする、激しい振り付けの部分があるのですが、残念ながらこの日は1回ずつにカットされていました。
舞踊 チャンドラ・ワシ・ダンス
極楽鳥の求愛のダンスです。派手な極楽鳥ということで、派手な黄色やピンク、明るいあずき色の衣装の楽団は多いのですが、スマラ・ラティ楽団では、渋いあずき色と落ち着いたオレンジという日本人好みの大人の配色が使われていました。踊り子は、姉妹と言って良いくらい似た顔立ちで、コンビの息もぴったり。
ケチャッ・ダンス ハノマン師団
日本だと消防法に掛かりそうな屋内での炎
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さっきまで太鼓を弾いていた奏者
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インドの古代叙事詩ラーマヤナ物語の中から、シータ姫の誘拐のシーンを上演します。とプログラムに解説があります。今まで明々と照明に照らされていた会場が突然暗くなり、松明を抱えた人が舞台に登場します。「あら、さっき交通整理をしていたお兄さん!」一緒に見ていた友人と、松明のお兄さんの方に気を取られているうちに、いつの間にか・・・本当に、いつの間にか、演奏者がいきなりケチャッの格好になっていました。衣装は胸で結んであるだけなので、パッと外して、早着替えをしたようです。写真を取り損ねてしまって、申し訳ない!
演奏者によるケチャッの合唱の後、舞台にはシータ姫役の踊り子と一緒に、ウェルカム・ダンスでも踊っていたアノム氏の娘さんが再登場してきました。魔王ラワナの姪であるトリジャタの役です。この設定をみると、定番の魔王ラワナによる誘拐のシーンではなく、誘拐された後に魔王の宮殿でトリジャタがシータ姫をなぐさめるシーンからストーリーが始まっているようです。
泣き続けるシータ姫を慰めるトリジャタ、そこへ、シータ姫の夫であるラーマ王子から指令を受けた白い猿のハノマンが、宮殿に忍び込んで来ます。突然現れた白い猿を、敵では?と疑うシータ姫。ハノマンはラーマ王子から託った指輪を渡し、それを見て信用した姫は、自分の髪飾りをハノマンに渡します。
ここでハノマンはケチャッ隊に抱えられて舞台を一巡して、ケチャッは終わりとなります。
ウブドの公演で行われているケチャッは約一時間。ずっと同じパターンのチャッチャッと言う合唱を聞いていても、時々、間延びして退屈になるものなのです・・・そこでケチャッを短くして、観客が飽きないようにサンヒャン・ジャランなど他の演目を入れて一時間に延ばしてある公演も多いようです。
今回見たスマラ・ラティ公演のケチャッでは、シータ姫の誘拐劇で定番のラーマ王子やラクスマナ、ラワナ王は現れず、戦いのシーンが全く無かったですが、ケチャッを体験するにはちょうど良い長さだとナビは思います。
最後には、ケチャッの姿の演奏者と、踊り子との舞台挨拶があります。
いつもは公演会場への一番乗りを心がけるナビですが、この時は、3番乗りくらいでした・・・連続一番乗り記録、達成できず。出遅れたその理由は、渋滞。
欧米人のバケーション・シーズンでウブド周辺が通常より混んでいたうえに、ウブド中心部の道路陥没騒動、ウブド・フェスティバルの影響での通行止めや迂回。さらに、ツーリストだけでなく地元っ子も、デートやジャラン・ジャランに出かけるマラム・ミングー(=土曜日の夜)であったのを出発前まです~っかり忘れており、家を出たら、道路の混みように唖然。という状態でした。車を飛ばそうにも、渋滞は前に進まないし、ツーリストが道路にはみ出して歩行者天国の様になっているし、同行の友人と、「今年(2009年)の夏のウブドは、まるでクタのレギャン通りにでも居るかの様な錯覚を受けるね。」と話しながら移動しました。他のお客さんも同じ様に渋滞で車が進まない状態だったのでしょう。開始ギリギリに慌てて走ってくる姿もチラホラ。しかし演奏者と踊り手も同じ状況だったらしく、メンバーが揃わないのか、15分遅れの開始でした。しかし、誰ひとり苦情を言うお客さんは無く、みんな近くの席の他の客と会話をして、おとなしく待っています。この「バリ時間」の存在、バリ島を訪れるツーリストには、しっかりと伝わっているみたいですね。時間に正確な日本から来ると、あまりのルーズさにイライラとすることも多いバリ時間ですが、郷に入っては郷に従えのつもりで、ゆっくりとした時間の流れに付き合ってみるのも良いバリ体験ではないでしょうか。
以上、バリ島ナビでした。