バリ西部ヌガラの芸能ジェゴグは巨大な竹の楽器。ウブドでも体験できる重低音が魅力のジェゴグ公演を紹介。
こんにちは!バリ島ナビです。
みなさんは、楽器「ジェゴグ」を御存知ですか?バリ西部のヌガラ地方に生える巨大な竹で作られ、その重低音は体の芯にまで響いてきます。戦時中に禁止され途絶えていた伝統楽器ジェゴグですが近年になってヌガラの芸術家の手で復活されました。材料の竹は湿度などで音の響きが違ってくるため、本場で聞くのがベストなのですが、ヌガラはちょっと遠い場所・・・。そこで今回はウブドでも手軽に聞けるジェゴグの公演を御紹介します。
簡単に足を運べるウブド・エリアでのジェゴグ公演は現在2グループが行っているのですが、開催地が「ブントゥユン村」ということで「スアラ・サクティ」の公演を選んでみました。ミーハーなナビは、ジュリア・ロバーツのハリウッド映画で撮影に使われた場所にブントゥユン村も含まれていたので、ついそちらへ・・・撮影の方は先月(2009年11月)、もう終了してしまいましたが、ロケ地に選ばれるだけあって、水田の多い地域です。会場へのルートは、ウブド王宮の十字路を8分くらい北上していった所。ホテル・ワカ・デ・ウマを超えると水田があり、その先のカーブの手前に会場の「プラ・ダラム・ブントゥユン寺院」はあります。のどかな村の景色と水田の道路に、突然「ジェゴグ」と書かれたノボリが出没するので、わかり易いです。
公演プログラム
楽曲 トゥルントゥンガン(インストゥルメンタル)
演奏者が静かに入場してくると、聖水がまかれ、演奏が始まります。照明が消されると、オープニングの曲が静かに叩かれ始めます。楽器は舞台上にあるのは判っているのに、暗さが手伝って、どこから音が流れて出てくるのか、ちょっと迷うような感覚に陥ります。地面や、遠い背後からも音が響いてくる感じです。ジェゴグの特徴である共鳴と闇を上手に利用してありました。
暗い中、一か所だけ照らされて目立っていたのが、「開演の祈りの曲」と演目が日本語で書かれた布。そういえば先程まではグループ名が書かれた青い布が下がっていたはず・・・ということは、交換した?と思って気をつけて見ていたら、各演目が始まる前に、次の演目名が書かれた布を、係のおじさんがパラッとめくっていました。バリ芸能公演に来たというよりも、なんだか芝居小屋だとか落語のお題のイメージが浮かんでしまう不思議な雰囲気。
舞踊 パニャン・ブラマ(歓迎のダンス)
最近のバリ島の幼稚園の発表会では定番の舞踊「ゴパラ」は、とてもコミカルなダンスです。ここでは農夫の踊りとして紹介され、村の男の子が、一生懸命に踊ってくれます。音楽に合わせて、体操のようなパキパキした動きの踊りが踊られます。時々動きがバラバラになってしまったり、振りを忘れたのか隣をコッソリ見たりするのですが、そこはカワイイ小学生ということで、御愛嬌。
ジェゴグの曲が演奏され、その途中に竹筒のクルクルを叩きながら6人の男性が入場してきます。ジェゴグだけでお客さんが飽きないようにというサービスからか、ここで竹筒の男性による超小編成6人ケチャが行われます。実際には後方のジェゴグ奏者も声をだしている様でしたが、声が小さすぎて物足りない感じ。頑張れ!おやじ団!
歓迎の踊りの女の子が衣装を変えて登場します。後ろからはゴパラの男の子の登場・・・かと思いきや、ゴパラの衣装を着た大人でした。もしかして、来てみたら集まったのが子供ばかりだったから、恥ずかしくて先程は踊りに参加しなかったのかな?などなど色々と考えを巡らせてしまうナビ。
ケチャに合わせて二人が踊ります。男性が退場すると、白ひげのお爺さんが登場してきました。あれ?これって、もしかして、ラーマヤナ?女性はシータ姫で、先程の男性はラーマ王子だったようです、まったく判らなかった。王子が農夫に見えてしまうなんて、いかに男性を見る目が肥えてないか、自分自身にガッカリしてしまうバリ島ナビでした・・・
さて、物語の方では、白ひげのお爺さんがシータ姫を騙して誘拐していき、ここでケチャと楽曲の終了となりました。
舞踊 ブリビス
「白い野鳥の鴨が、舞い飛ぶようすを表現した踊り」という解説がプログラムにあります。白い羽をつけた踊り手が、舞台に入場してきます。
いままで、お客さんの拍手も微妙~な感じだった公演内容ですが、このブリビスで「パッ!」と風向きが変わりました。5人の踊り手が鳥の動きを模しながら、次々とコンポジションを変えながら踊り続けるため、場所の移動に合わせて、演奏の方も激しいメロディーが続きます。
ジェゴグはリンディック(座って叩く小型の竹楽器)とは違い、立ち上がったまま、全身を使って演奏する楽器。これこそジェゴグ!というノリノリの音が、この曲でやっと出始めました。踊り子さん達も汗だくで真剣です。
舞踊 ムクプン
ヌガラ地方で行われている水牛レースをテーマにした踊り。4人の女性が水牛の役で登場して踊ります。後半で男性が1人登場してきました。先程ケチャの時にゴパラと勘違いしたオレンジ色の衣装の男性です。勇ましく出てきて、右手でムチをふっては水牛を追う様子を踊ります。
楽曲 スルヤ・ニャランタラ(インストゥルメンタル)
舞台の照明が落とされると、踊り子たちがロウソクを持って再登場してきます。島唄に似た感じのする、どこかで聞いたことがあるような懐かしいメロディーが竹笛のスリンで静かに演奏され、ジェゴグの後ろに置かれていた飾りが舞台上にスルスルと移動されてきます。カバーが外されると同時に照明が灯され、巨大な竹楽器が現れます。
これが、この楽団オリジナルの「スルヤ・アグン(大きな太陽)」です。ヌガラで生まれたジェゴグをウブドで演奏しているが、ただ公演しているだけでなく、自分たちの楽団にしかないオリジナリティのあるものを作りたい、と模索したそうです。タバナンとバドゥンの県境に生えていた巨竹を使ったという「スルヤ・アグン」は、幅4メートル、高さ3.5メートルになります。今まで演奏していたジェゴグより、さらに重たく響く音が出ます。
ムバルン
そのまま演奏はムバルン(競演)へと流れ込みます。ムバルンは楽団同士が競演するものなので、この場合「スアラ・サクティ」VS「スルヤ・アグン」という設定でしょうか。プログラムにも重低音と中音・高音の音の競演とありました。ここで、例の演目幕がめくられ「どうぞステージへ上がって音を体で感じてください」の文字!お客さんは舞台に上がって、ジェゴグの下に座ってみたり、近くでじっくりと眺めたりできます。
楽曲 プヌトゥップ(インストゥルメンタル)
ジェゴグ楽器に実際に接近して、その振動を体感したお客さんたちは喜んでいます。楽しい雰囲気の中、舞台は終了となります。踊り子さんが舞台上に再登場してくれるので、記念撮影もできます。
ジェゴグは、楽器の編成の通称で、舞台右手に置かれた3台の楽器の中で一番大きいものがジェゴグです。飾りが一番派手で中央にあるので、わかりやすいかと思います。体を震わせる重低音を出しているのが、この楽器で、男性2名が楽器の上に乗って叩きます。その他に、中音や高音を出す複数の竹楽器のアンサンブルが「ジェゴグ」と呼ばれており、他に太鼓のクンダンや、シンバル役のチェンチェンなどを使って「スアラ・サクティ」の演奏は進められます。
バリ島滞在が長い方であれば、本場ヌガラでのディープなジェゴグの体験が可能ですが、片道3時間のヌガラへの行程が辛いと思う方、時間が限られた旅行である方の場合は、手軽に体験できるウブド・エリアでのジェゴグはいかがでしょうか。
以上、バリ島ナビでした。