神々の住む島「プラウ・デワタ」のお寺にはどんな種類があるのか、詳しくご紹介します。
アパ・カバール、バリ島ナビです!皆さんは、バリ島に来られて、いやにお寺が多いなあ、と思われたことはありませんか?もちろん、観光で行くのも有名なお寺が多いですね。道路を走っていても、次から次へとお寺らしきものが見えます。
それもそのはず、バリ島では各家庭の敷地の中に、かならずファミリー・テンプル「家寺」が有ります。一家に一寺、というわけです。家の敷地のうち、4分の1~3分の1は、家寺になっており、人々の敬虔な祈りが、先祖代々受け継がれていくのです。
その他にも、各集落や村ごとに、かならず「プラ・プセ」、「プラ・デサ」、「プラ・ダラム」という、カヒャンガン・ティガ=三つの聖地、という規定通りの寺院があります。
「完全な村」となるには、必ずヒンドゥーの三大神「ブラフマ・ウィシュヌ・シワ」を祀る寺がなければならず、この三つはヒンドゥーの聖なる真言「AOM=オーム」に相対しています。
また、バリ島では今でも王族階級があり、王族の私的な寺院である「プラ・プナタラン」、共通の家系を結ぶ、一族の起源寺である、「プラ・ダディア」、「スバック」と呼ばれる農業組合ごとにある、稲作の寺、「プラ・ドゥグル」、墓地のそばに必ずある、死の女神ドゥルガを祀る寺、「プラ・ムラジョパティ」、市場にある、種子と市場の神々を祀る寺、「プラ・ムランティン」、その他観光名所にもなっている、山の寺、海の寺、水浴寺院、湖、洞穴、泉、木、等々数限りなくお寺が有ります。
このように、人口と同じくらいのお寺があるのではないかと思われるバリ島、神々の島と呼ばれる所以となっています。
今日は、観光で行くような大きなお寺ではないですが、よく目にするバリ島のお寺を、少し詳しくお伝えしましょう。
まず、どの村にも必ずある、三つのお寺。
PURA DESA/プラ・デサ
プラ・デサは村全体の公的な祝い事のための地域共同体の寺院です。プラ・デサには「Bale Agungバレ・アグン」という村の長老たちが集まる昔風の集会場が、敷地の端についています。場所によってはPURA PUSEHプラ・プセとひとつになっている所も多いです。
プラ・デサはヒンドゥーの三大神のうち、創造の神・ブラフマ神をあらわすと言われています。
PURA PUSEH /プラ・プセ
PUSEHは、「へそ」と言う意味で、村が生まれるもととなった人たちの古い寺院です。その村の信仰の中心として最も重要なお寺であり、場所によってはPURA DESAプラ・デサとひとつになっている所も多いです。
プラ・プセはヒンドゥーの三大神のうち、守護の神・ウィシュヌ神をあらわすと言われています。
PURA DALEM/プラ・ダラム
プラ・ダラムは、一般に死をつかさどる寺院と言われていますが、それだけではありません。ただ、お葬式を出す際は、必ずプラ・ダラムで聖水を戴きます。死者と言うよりは先祖との結びつきが強い寺院といえるかもしれません。
プラ・ダラムはヒンドゥーの三大神のうち、破壊と滅亡の神・シワ神をあらわすと言われています。
この三つの「創造」「守護」「破壊」が繰り返され、村が存続していくわけです。
さて、それではお寺の内部を見てみましょう
お寺の内部の構造は、どの寺院も基本的にそんなに変わりません。バリ・ヒンドゥーの寺院には偶像崇拝の対象となる絵や彫像は祀られていません。普段は空っぽな祭壇が立ち並ぶばかりですが、祭礼の日には、神々を招へいして懇ろに盛大にもてなすのです。
まず、お寺の入口は、「チャンディ・ブンタル」という、「割れ門」があります。この門はヒンドゥー教徒の礼拝の場である寺院と切り離すことのできないもので、宇宙の中心にそびえたつとされるマハメル山(須弥山)の象徴であり、そのマハメル山の土台を表しています。
その割れ門の中に入ると、プラ・プセとプラ・デサがひとつになっているこのお寺の、Jaba Tengahジャボ・トゥンガ=中庭に入ります。ここで目を惹くのは、Bale Agungバレ・アグンと呼ばれる建物で、この建物がプラ・デサ特有の建物ということになります。
プラ・デサを特徴づけるバレ・アグン
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Bale Panggungan
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敷地を囲むようにして、いくつかのBale Jajarバレ・ジャジャールという、オープンな建物が有ります。これは儀礼の際に、参詣してくる人々が座ったり、また奉納演奏をするガムラン隊が使用したりする建物です。
また、僧侶が祭事を執り行う際に座る場所を「Peganteb」といいます。テーブルの上に様々な法具を置き、僧侶がマントラを唱えます。
さて、それではJeroanジェロアン=境内に入ってみましょう
Jaba Tengah ジャボ・トゥンガ=中庭とJeroanジェロアン=境内を隔てる中門を「コリ・アグン」といいます。これは、さきほどのマハメル山の山腹を表しています。この中門の横にも二か所、小さな出入り口がついており、この二か所は、祭事の際に人間が通過する出入り口で、真ん中のコリ・アグンは御神体の出入り用になります。
境内に入るとまず目につくのは、空に向かってそびえ立つMeruメル。このメルとは、重層の屋根を持つ塔のような形の社のことで、マハメル山の山頂を表しています。この重層は3から11までの奇数個と決まっています。そして、このメルがあるお寺は決まってプラ・デサかプラ・プセで、プラ・ダラムには通常メルは有りません。
大事なのが、太陽神サンヒャン・スリヤを祀る祠であるPadmasanaパドマサナ。これは必ずアグン山を背にして建てられています。つまり、パドマサナを見れば、アグン山の位置が分かる、ということです。
その他にも、グドン・プシンパンガンと呼ばれる寺院の宝物や財産を閉まっておく鍵のかかる建物、寺院の真ん中にあって、神々の共用の座、つまり祭事中、ご神体を安置する場所としてのポプリッ、供物を置く場所用のバレ・ピアサンなどがあります。
また、アグン山とバトゥール山を表す祠や、その他たくさんの祠が有りますが、地域によって、また寺院によって、祀られているものが様々です。
町中でよく見かける建物
さて、ではお寺の内部はこのくらいにして、外に出て、よく町中で見かける建物についてご説明しましょう。
まず、お寺の外や内部に必ずある、この高い建物。上に木製の釣鐘のようなものを吊ってあり、祭事となると、これをトントンと打ち鳴らして合図が送られます。これはバレ・クルクルと言って、重要な建物です。
次にワンティランと呼ばれる、三方が開いていて、奥が舞台のようになっている大型の建物があります。これは寺院に付属する建物で、寺院のオダラン(創立記念祭)の時に、参詣する人々の待合所となり、また奉納舞踊や奉納演奏が行われる大型の舞台にもなる場所です。ここが本来、寺院の外庭=Jabaジャボと呼ばれる部分にあたります。
ウブド近郊では、寺院の大きなワンティランが、観光客向けの舞踊公演の会場となっている所が多くみられます。祭事などに使われていないときは、村人の運動の場として人々が集まる場所でもあります。
以上、一般的なバリの村の寺院をご紹介しました。
あと、稲作を中心とした農耕民族であるバリ人の田園には、稲を守る神様のための寺院が必ずあります。Pura Dugulプラ・ドゥグルというこのお寺は、村の水利機構、スバックによって管理され、決まった時期に創立記念祭を行い、豊穣を願います。
又、バリの庶民の台所、パサール=市場にも、必ずプラ・ムランティンという、種子と市場の神々を祀る寺院があり、市場に出店する女性達が、毎日絶えることなくお供え物をし、商売繁盛を願っています。
村の共同墓地の近くには、Pura Merajapatiという、シワ神の妻であり、死の女神デウィ・ドゥルガを祀る寺院が有ります。その近くには共同の墓地が有り、大抵ぼうぼうと草の生えた土地で、死者が出たときには埋葬し、合同火葬が有る時はこの地で火葬が行われます。
最後に、各バリ人家庭の家寺をご紹介しましょう。
入口はやはりチャンディ・ブンタルがありますが、中庭などというものはなく、入ってすぐに境内となります。寺院や家寺には、生理中の女性や出血中の人は入れず、また中に入る時は最低限カマンという腰巻布と、スレンダンという腰帯を着用して入ります。家寺には、毎日、朝に夕にお供え物を備え、家内安全を祈願します。
祠の配置や名前は、先ほど見てきた寺院とそんなに大差ありません。アグン山の方角にパドマサナがあり、向かって左側にSaren サレン、Taksuタクスの祠が有り、パドマサナを挟んで反対側にグドン(ラトゥ・ゲゲルが祀られています)、Kemulanクムラン、Ngurah Agungングラ・アグン、Dewa Yangデワ・ヤンという先祖を祀った祠があり、あとはピアサンと呼ばれる、供物を並べたり、僧侶に来てもらったときに座ってもらうための建物が有ります。
門の内側にApit Lawanアピット・ラワン、門の外側にもう一つのパドマサナ(これは家族のための祠)が有ります。
さて、ここでご紹介した一般的な寺院の他、バリ島には無数の寺院が有ります。もし、中に入って見学してみたいな、と思われる方は、サロン(カマン=腰巻)とスレンダン(腰帯)を用意して、上半身も肩が出ない服装で、ぜひ見学してみて下さい。生理中・出血中の方は入れません。場所によっては鍵がかかっていて入場禁止の所もあるかもしれませんが、壮麗な内部の装飾は一見の価値ありです。以上バリ島ナビでした、サンパイ・ジュンパ~!
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記事登録日:2011-06-09